仲居さんに7時に朝食と言っておきながら、7時に起きられず、ノックの音で目が覚め慌てて浴衣を羽織る。私は、ほとんど裸で寝ているので慌てる!
仲居さんに促されるように、朝食前に今朝は男女が入れ替わった大浴場に向う。すると露天風呂があった。本の少し雨模様のようだが、露天風呂までには入ってこない。
お風呂の係りの方が、温度を測りにみえたので、少し会話する。
のんびり入って、部屋に戻ると、仲居さんが少し遠くから私が出てくるのを待っていて、直ぐにしたくをしてくれた。凄いサービスである。
このような旅館は総じてそうであるように、朝から大ご馳走である。したがって、ご飯は食さずおかずだけ頂き、食後の珈琲を飲みつつ、朝刊チェックする。これも講演に欠かせない準備である。
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チェックアウトは10時だから、迎えの来る12時半までロビーで待つ予定であったが、仲居さんが、進んで聞いてくれて、それならば・・・と部屋を延長して使えるよう手配してくれた。まあ、当然、延長料の請求が主催者に回るであろうが・・・
講演の構想を数時間練る。ここでの構想が最高だった。良き環境を得た効果で、差し迫った所で良いアイデアが生まれた!講演コンセプトが決まった!
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昨年度の税制改正に基づいて、これから確定申告をする。その注意点というのが今回の講演内容である。従って「講演コンセプト」など無いように思う・・・というのが素人の考え方であって、既成の法律を深く読み込むと見えてくるものがあるのである。
どの道、数時間の講演で全てを話せないので、そのエッセンスを話すときに、その奥深く流れる根幹を伝えてあげることができると、聴衆は、「そういうことか!」と枝葉に惑わされず、大きな理解が出来るというものである。細かいことは、実際にやる時にまた詳しく調べれば済むことである。私がわざわざ時間を割いて話すことではない。
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座敷机を昨日はTVを見るために、それに近付け、朝食を終えてからは朝の光ある縁側に寄せて、構想を練る。部屋の縁側からは、「赤松」とそれを取り囲む素晴らしい庭が見える。特等席である。
机の周辺の畳の上は資料が散乱する。MDを途中まで聞いたが精緻を追わず幹を探し当てる。
そして3時間の講演シナリオを完成させる・・・12時やっと出来た!!この間に珈琲のお代わりをしていた。延長料や喫茶料金など主催者に余分な支出をさせたが、それに見合うだけの内容にすることが、依頼を受けた者の務めである。「よし!」と少し早いが片づけをして部屋を出る。
ロビーに荷物を預けて、由緒正しい庭を拝見することとした。この庭には赤松がある。司馬遼太郎が『街道をゆく』の『長州路』の中で、記述したあの赤松である。これを拝見し、さらに奥に、維新の三傑、すなわち西郷・木戸・大久保の三者が会談した東屋を訪れた。
池は、温泉が少し混じっているのだろう、手を入れれば冷たくはない。周囲の空気に比べれば暖かいので湯気がもうもうと立ち上る。その池を大きな錦鯉が群れを成して泳いでいる。
庭石も灯篭も立派だ。ふと、「ここの関与税理士は、この庭をどう評価するのか大変だな~」と思い浮かぶが、この時点では、後でその先生に会うことになろうとは、この時は流石に思っていない。
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12時半に主催者が迎えに見えた。HPで面が割れている私を見つけるのは容易である。車で、20分ほどの会場に行く間に会話が弾む。
新山口駅前の山口グランドホテルの2階にある最も大きな宴会場で1時半から4時半までの3時間、予定通りに話ができ、大成功であった。
講演後に、挨拶に見えた方は、何と松田屋ホテルの関与税理士の先生であった。講演の中で、事業承継税制の話の話題として、秋芳洞や秋吉台に続けて同ホテルを取り上げたからであった。
喫茶で係りの先生や主催者の山口支社長と若干のお話をして、駅まで徒歩で送って頂いた。
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駅のお土産屋でふぐの冷凍品を家に送る。まあ、これが昨日の写メの追伸のようなものだ。そう言えば、昨日の写メに返事はないな~。やっぱり、少しはご立腹かな?まあ、決して遊んでいる訳ではないのだが、それも含めて御裾分けである。
6時6分の「のぞみ」に乗る。秀吉ばりの「大返し」で東京に向う。4時間半かかる。飛行機で行くのが多いらしいが、エコ出張だし、どの道、時間が掛かっても、その中で勉強すれば同じである。
土産店で買ったパン2つなどで軽めの夕食とした。昨夜からご馳走が続いたし、講演前だったので昼食は抜いて臨んでいたので、流石にお腹が減ってきていた。
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妻へのクール便の到着予定のメール、明日からの東京での講演後の訪問アポ取りや、再建研究会での現金連年贈与の質疑の返答メールなど、4時間半の間に10通を書く。
この連年贈与の問題は、私は「タックスアンサーの答えが間違っている」と反論を述べている問題なのだ。だから、感嘆にタックスアンサーを信じて処理したら大変なことになるのだと言いたい。
さらに、その間に、明日からの2日間コースの東京講演でデビューする自らの新刊を初めて読み込み、講演構想を練る。
東京は、予定を変更して、品川下車で山手線で高田馬場に向う。5時間掛けて到着すると11時を過ぎているので、いつもの王将もオーダーストップしているから、口寂しいこともあって、ホテルの裏にローソンがあったはずと、初めて行って、飲み物などを購入して自分で祝杯を上げた。
昨夜は老舗旅館で、一人前祝をしていたし、明日から3日間は毎夜懇親会があるので、今夜は休肝日としたのである。
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日経の夕刊の小説『無花果の森』から良い言葉を拾った。
「あたしはね、死ぬまで絵を描いていきたいんだよ。と言ったって、残り時間はほんのわずかだけどもさ。ともかく、絵を描くこと以外、他のことはなんにもしたくないんだよ。言ってみりゃ、生活するのも面倒くさい。生きて絵を描くことだけで時間切れなんだ。他のことにかまけている暇なんか、一切ない」